2017年02月17日

健忘録 抗がん剤編A

病院へ行って吐き気止めを貰って、次の日には尿に血が混じる事もなくなりました

先生によると、夜の間にたまっていた血液が、朝一気に出て特に赤い尿が出たのでしょうとの事
なんかとんでもない事になったのかと思っていたので、かなりホッとしました

それから数日後には二回目の抗がん剤、また入院です

私は、毎日簡単なメモを残すようにしていたのですが、この頃書かれているのは「吐き気有り」「今日は吐き気無し」これがとにかく多いです
吐き気に怯えながら手探りで生活をしていました

「吐き気なし 胃もたれ有」
「吐き気はないけれど胃もたれ続く」
「朝からしっかり歩く 夕食後食べた物を吐く 水がざぱっと出た感じ」
「朝吐きけ止め 昼からは体調良 夜吐きけでご飯食べられず」

こんな感じです

もうパニック状態です

強い痛み止めで吐き気の副作用があるお薬も貰っていたので、抗がん剤による吐き気なのか薬の副作用なのかそれとも癌が悪化してしまったのかわからなくって
ぐるんぐるんしました

関節・筋肉痛がこれまた厄介で、骨に転移があるとその場所は結構痛むのですが、関節痛なのか骨が痛いのか自分ではわからないんです!
頬から頭にかけてとか、脛とか、太股、脹脛、腰、背中、胸筋も痛みます
ゴムのとんかちで殴ったみたいな痛みが、ずきー、ずきーと起こります

しかも日によって波があるので、「うわ〜今日は調子いいぞ〜! ひゃっほー!」からの「あかん……昨日はしゃぎすぎた…ホンマすんません…」の繰り返し
ハイとロウを繰り返すので、精神的にも参ってきます

左の鎖骨上にしこりも出来てしまい、これも私を不安にさせる要素でした

でも、メモを残していくと、少しずつですがわかってくる事があります
抗がん剤を打って次の日は体調が良い
三日目くらいから吐き気が出るので吐き気止めを飲んでおいた方がいい
とか
毎回同じところが痛くなるから、これは癌じゃなくて副作用
とか

それでもその流れを掴むまでに結構な時間がかかりましたし、特に夏の間は食欲が殆ど無くて何を食べるか毎日悩んでいました
両親も相当気を揉んだと思います
この頃はちょっとでも「うぷっ」となったら私より先に母が「吐く? 大丈夫?」と聞いてきたような感じです

味覚の変化も7月頭には始まってしまい、何を食べても変な味になってしまいました
忘れられないのがたこ焼きです

選挙の期日前投票に行った日だったので7月9日
投票に行った帰りに無性に食べたくなって、たこ焼きを買って家に帰ったら、ソースの味が全く違うんです
表現しにくいのですが、甘辛いの辛いを抜いて、甘みに合成調味料をふんだんに盛り込んだ味、とでも言いましょうか

全然美味しくない!
結局一個だけ食べて、しょんぼりしていました

味覚の変化は、きっちり歯を磨いて口内環境を良くすると、改善されると聞いています
食事のあとは欠かさず歯を磨くようにしていますが、マシになったような…
やらないよりかはやった方がいいかな、すっきりするし、という感じです

暑い間は主食がスイカだった気がします
それから林檎、バナナ、ゼリー
裏庭に主に父が手入れをしている小さな畑があるのですが、そこで出来たプチトマトとキュウリは朝の収穫後にいただいていました

立部さん曰く「虫のような食事」
否定はしない
いっそネタにする


次に、臭いも駄目になりました

私は野菜を煮る臭いやお出汁の臭い
炊きたてのお米の臭い
お魚などの煮物焼き物の臭い

この辺りが全部駄目になりました
嗅ぐと吐き気がして口に入れられない

そりゃ、食欲も落ちますよね

対処方としては、料理が冷めてから食べる
なのですが、それでも色々限界があるので、今かなり偏食家です
こればっかりは、本当に慣れませんでした

人によっては、お花の匂いとかタンスの防虫剤の臭いが駄目という話も聞きました
以前入院患者へのお見舞いでお花が駄目な場合があると書きましたが、これがそうなんですね
想像以上にやっかいです


食と言えばその頃、一冊の本を買ってきて読んでいました
癌になったら何を食べたら良いかという本だったのですが、食事療法というのはかなり効果があると言われているみたいなのですね

でも、本の通りにすると今まで食べていたものは何も食べられなくなるんです!
ブドウ糖(体内でブドウ糖に変わるものも含め)が駄目だというのは良く知られていると思うのですが

塩駄目 砂糖駄目 化学調味料駄目 農薬駄目 牛豚駄目 乳製品駄目(これは良いというお医者様もいます) 極めつけが、米駄目 小麦駄目

とにかく野菜!
無農薬野菜を目一杯食え!!

私……パスタ食べて生きてるんですけど……

代替え品として、お米の代わりに玄米
小麦粉の代わりに全粒粉
塩は岩塩 砂糖は黒砂糖やてんさい糖

と、ありました

外食は以ての外と

もちろん、それで癌が治っている方もいます
私も最初は出来るだけやってみようとしました
お菓子を絶って、果物食べました
玄米を食べてみました

ですが、抗がん剤で弱った体に玄米は……無理でした…
そもそも臭いで駄目でした
胃腸も弱っていたので生野菜も消化に悪く、みるみる体重が落ち……

諦めましたヽ(・∀・)ノ

玄米は体に合う合わないがあるそうですし、私にはこの方法は合わなかった
そう思って、自分で出来る範囲でだけ実行する事にしました

お菓子は食べます
時々ケーキなんかも食べます
食べ過ぎないようには気を付けます
自然食品のお店に行って、無農薬のさつまいもチップなんかも買って食べます

お米も玄米も食べにくいので、今よく食べているのはお餅です
消化に悪いという話もあるので良く噛んで……胃腸が弱っている時はお米を少しだけ食べるようにしています
お餅も糖になるので玄米の代わりになる訳ではないのですが、臭いも気にならずにパクパク食べられたので、今年の頭からずーっと食べています

お肉は出来るだけ鳥を食べています
元々焼き肉に禁断症状を覚える座長とは真逆なので、これは平気です

それから、人参ジュース
特に皮に含まれる成分が癌に有効なのだとか
従兄弟が人参を送ってきてくれているので、これもありがたく飲んでいます

食べたいな〜と思うものを食べて、食べにくいな〜と思うものは避けています
もうこれでいいかなって

勿論!!!
これがまんま参考になるとは言えません
自然食でしっかり癌を治した方からすれば、邪道以外のなにものでもないと思います
食事療法は私が合わず、我慢できなかっただけです

食事療法が気になる方は、ネットで検索すると沢山出てくると思います
その中で、自分が合いそうなものを探したり、指導をしてくれる病院を尋ねると安心だと思います


あと一つ大事な事を

髪が抜け始めたのは7月7日からでした
いきなりバサーっと抜ける訳ではありません
あら、髪をさわると抜けるなあ
枕に抜け毛が沢山ついてるなあ

これがスタートです

段々、手に絡まる抜け毛の量が増えて、部屋のあちこちに私の髪の毛が落ちるようになって、家のあちこちに私の髪が落ちるようになって
髪を洗うと大量の抜け毛にいつまでお湯を注いだらいいのかわからなくなります

メッシュのシャンプーハットのようなものが、病院の売店なんかで必ず売られていますので、歩いてもパラパラ髪が落ちるという頃にはこれを使うとお掃除が楽ちんです
寝る時にもかぶっていられますし、ぎゅっと詰めれば帽子にも入ります
何より、メッシュなので夏の暑い時期でもかぶっていられます
10枚500円くらいです

髪が抜ける事に、ショックはありませんでした
準備をしっかりして覚悟を決めていたのが良かったのか、元々ウイッグ慣れしていたからかはわかりません

お風呂のすのこに大量に絡まった髪を抜き取りながら「海苔職人」と、ほざくくらいの余裕はありましたし、すっかり髪が抜けきった後、お風呂に顔半分を沈めて身を切った渾身の一発芸「茹で蛸」を家族に披露したくてウズウズするくらいの余裕はありました

ですが、そんな私でもやっぱり言われたくない言葉はありました
一つは「ハゲ」
勿論、私に対してハゲと吐きかけた訳ではありませんよ
私も結構ネタにしますし、会話の中でぽろりと今の状態を表わす言葉として漏れたものです
ですが、抜ける事にショックはなくても抜けて嬉しい訳ではないからやめてくれと言いました

もう一つは「赤ちゃんみたいで可愛い」
全く悪気はないのはわかっています
今の状態を悪いものじゃないよと言ってくれようとしたのだと思います
でも「何で?」と言われると「嫌だから」としか言いようがありません

頭の形がいいから全部抜けても似合うと思う
と言われた時は平気でした
でも赤ちゃんみたいはど〜〜〜しても嫌だったんです
それも、言わないで欲しいとお願いしました

ホント、何がよくて駄目とか人によって違うと思いますし、相手も悪気はないので難しいな〜〜と思うのですが
何か気になる事があったら早い内に言った方がいいです
そこは我慢するとしんどいし、逆にカッとなって腹を立てる必要もありません
言えば皆やめてくれます
喧嘩するのも体に悪いです


最後に手足の痺れ

ちょっと表現しにくいのですが、手足にブツブツのついたゴムのぴっちりグローブをはめている感じ、です

手も足もちょっと鈍くなります
人によっては痛みを感じる事もあるそうです

足の感覚が鈍くなっている事が自分でもわからず、階段で足を滑らせ危うく転げ落ちそうになる事が何度かありました
いつも通り階段をおりているつもりが、足が階段からずれていたんです
足の裏の感覚が鈍くて、それに気付けませんでした
今はちゃんと階段を踏んでいるか、足元を見ておりるようにしています

手は、物を取り落としやすくなったのと、熱を感じるのが少し遅くなりました

なので、レンジでチンしたお皿を手に取って、いけると思って持ち上げて数秒後にいきなり熱くなって、「あっちゃっちゃ!!」と手を離してしまった事があります
もちろん、中身はぶちまけてしまいました……

それからはしっかりさわって、本当に熱くないのか確かめるようにしています

ちょっと気を付ければ、慣れてくれば何とかなってきます
酷くなる人はボタンを留められなくなったりする事もあるそうですが、ごく希な事だそうです


夏の間、お見舞いを沢山いただきました

近所に住んでいる伯父や叔母からは、毎日のようにスイカやパイナップル、林檎をいただきました
仕事で家を出ている弟からは、塩分控えめのお出汁やドレッシング、化学調味料不使用の調味料がどっさり
今でも定期的に、私が口に出来そうな林檎やジュースを送ってきてくれます
父の友人も、家の畑で作ったお野菜を持って来てくれます
農家をやっている従兄弟は無農薬のにんじんを定期的におくってきてくれます

芝居仲間からもおそうめんが届いたし
座長は気分転換したいなら、吐きけのない日に言ってくれたら車出すと言ってくれたし
外に出掛ける時は立部さんか北さんがついてきてくれたし

うっ、いけません
こういう事を書き出すときりがないです
ぶわーっと溢れてきます
すんません、ありがとう


話を戻して
体重も落ちて食欲も落ちて、フルーツや野菜ばかりもそもそと食べていましたが、何とか夏を乗り切る事ができました

低空飛行な生活でしたが、出来るだけやっていたのはお散歩です
走って転ぶと血小板や白血球が減っているので治りにくいし貧血ぎみになっているし、更に腰椎に癌があるので折れやすいから、運動は出来ないよ〜と先生に言われていました
でも、入院していた事もあって、足も腕もひょろんひょろんになっていたのです!

体重も小学生か!! という位落ちました
虫のような生活をしていたので仕方ありません

先生からは「歩いてください」と言われていました
なので毎日30分、暑くなってきた頃は夕方の涼しい時間を狙ってお散歩に出るようにしました
これが結構気持ち良かったです

小学校への道のりを久々に歩いてみると、昔からある風景と新しく変わった風景が混ざって、なんともいえない景色になります
懐かしいのにちょっと違う、微妙なマーブル模様

何にしろ、これは体に悪いこっちゃないなあと思いました

そして、今の好きなものを我が儘に吸収出来る環境に、ありがてえなあと思うのです






posted by masako at 19:29| Comment(0) | 芝居以外の日常
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