2017年02月14日

健忘録 入院編 手術後

手術が終り、先生から説明がありました

まず、左の卵巣を摘出した事
目視で確認出来る播種を取った事
子宮内膜症で癒着していた腸を剥がした事

それから所見では、取り出した腫瘍は癌で、悪性だという事でした
これから病理にかけて、癌の大元がどこなのか確定し、使う薬や治療方針を決めていくという話でした

悪性だったという事に、もう衝撃はありませんでした
多分そうだろうという見解であったし、数ミリの期待に希望を抱く程追い詰められてもいませんでした

お腹の傷痕は綺麗ですよ、と言われました
私のお腹には腹帯が巻いてあって、私は暫く傷口を見る機会がありませんでした

それに、腹帯を開く機会があっても、目を逸らしていました
そこにばっさりと大きな、痛々しい切り口があるのを想像してしまったからです
シャワーが浴びられるようになるまで、お臍から下腹までの約20pを直視する事は出来ませんでした


意識がはっきりしてくると、色んな事を理解するようになります

まず一つは前の日記にも書きました、痛みです
それから、管に繋がれた煩わしさ

寝る時も腕や背中から点滴の管が出ているので、まともに寝返りも出来ません
管がなくてもお腹が痛いので、寝返りなんて出来ないんですが……足も血栓予防の機械にがっちり拘束されているので、ベッドの上では天井を見上げるのみになります
これらは、立って歩けるようになったら取り外せる、という事でした

これまた驚きな事だったのですが、手術後、全然起きられないんです
まず頭を上げる事が出来ません

寝たきりになっていたって言ったって、せいぜい丸一日あるかないかです
それが、ベッドのリクライニングを起こすだけで酷い目眩に襲われるんです!
本当に驚きでした

よく病院もののドラマなんかで、意識が回復したらすぐにぺらぺら喋ったりとか、思い立ったその日に手術とか、あれ全部不可能だと思いました
目が覚めた時にばっちりメイクなんかしてないし、目が回るから体を起こす事も出来ないし、ぼんやりしていてうまく話せないし、体中管まみれだし、手術前には下剤がつきものです
いや勿論フィクションだからの演出ですけれど、体験したばかりの身としては、こんなスルスルいかんぞ〜と思ってしまうのです

置いておいて、手術の次の日にはもう立つように促されるようになっているんです
看護師さんに「もう少ししたら来るから、そしたら一緒に立ってみましょう」と言われます
出来るだけ体を起こして、頭のぐらぐらに慣れさせておきます

一日目はその準備が足りなかったのだと思います
お腹の痛みを庇いながら何とか立ち上がると、物凄い目眩と吐き気
自律神経の発作が起こりかけ、たまらずベッドに戻りました

今日は無理、明日にしましょう
悔しかったです
一日目で歩きたかった

次の日リベンジして、立つ前の準備をしっかりして、今度は歩く事に成功しました
血栓予防の機械や点滴、尿の管も取れました
本当に嬉しかったです

それから毎日なるべく歩くように言われたので、回遊魚のように病室の周りをぐるぐるぐるぐる歩いていました

立って歩けるようになったら、次は食事です
点滴がなくなって初めての食事はお昼ご飯でした

コーンスープのような臭いに心躍らせ一口飲むと、天から地へ叩き落とされる位のがっかり感
味が殆ど無いスープ
それはそうです
久々に胃を動かすので、刺激の少ないものから徐々に慣らしていく訳で、いきなりしっかり味のついたものなんか食べられる訳がないんですね
重湯もお粥の汁だけ
臭いはお粥なのに、どれだけさらっても米粒一つ入っていないんです

ご飯が食べられるようになって数日後、立部さんが見舞いに来てくれた時の写真がこれです
S__91832325.jpg

あまりに食が進まず、ご飯の前で項垂れる私の図

この時私は個室なのをいい事に、結構立部さんにこれは食えないこれは食えると味見させていた気がします
いえ、味見させました
すみません

食事が出来るようになってきた頃、何か食べたいものがあるかと聞いてきた両親に、私は醤油味の煎餅、と言いました
両親はおせんべいをラップに包んで、持って来てくれました
小さいものが三枚
二日にかけてこっそり食べたのですが、本当に美味しかったです


こうして少しずつ食べたり歩いたりしてしっかり動けるようになってきた頃、咳が出始めました
手術中、喉に管を入れる為に、手術後咳が出る人があるという事でした
私以外にも手術後に咳をしている人を結構見かけたので、かなりの確率でなるようです

この咳が厄介で、軽く咳をするだけで、お腹の傷が物凄く痛むのです
これは一週間から十日くらいは続くのですが、コンと咳をすれば痛くて蹲る、という状態です
お腹に手を添えて体を僅かに丸めて咳をすると、痛みが少しマシに感じられました

咳をすると痛みますが、笑っても痛いです
体調が良くなってくるとお見舞いに来てくれる人が増えます
劇団員も来ます
病院から職場が近かった立部は本当に、毎日のように来てくれました

気の知れた仲間ですので話も盛り上がります
笑います
痛いです
もう咳は出るわ笑うわ痛いわで、手術から暫くひいひい言っていた気がします

看護師さんも日にち薬だと言っていたので、それも段々良くなっていきました
痛みでどうにかなりそうだと思っても、それは数日の事です
安心してください
治りますよ

痛みが落ち着いて来た頃、私は大きな咳を一つしました
プチ、とお腹が鳴りました
お腹の中から聞こえて来た気がしました

痛い、と思いましたが大した事はなく、何があったんだろうかと首を傾げました
最近の手術の糸は、抜糸などがいらない溶けるものと聞いていたので、まあ問題ないだろうと思いました

それから数日、退院後にもかかって下から上に徐々に上がってくるように、プチ、プチ、と何かが切れる感じがありましたが、私はこんなものだろうと思っていました

この時何も言わずにいた事が、後々私を苦しめる事になるのですが、一旦置いておきます


ある日、シャワーを浴びる許可が下りました
毎日暖かいタオルで体をふいてはいましたが、長い間髪も洗っていないし、しっかり拭いていてもやっぱり足や背中がもぞもぞする感じがします

お腹の傷を見るのは怖いし水が染みるのではと思ったのですが、そんな事よりもシャワー浴びたいという気持ちが強くなっていました

いざ、お腹の傷を見てみると……お腹に細かくテープが貼られていました
肌色のテープです
傷は、ザクザクと縫い目なんてありませんでした
血の跡も全くなく、さっぱりとしたものでした

大体一人30分という規則があったので大急ぎで、でしたが、本当に気持ち良かったです
傷口も水に染みるなんて事はありませんでした
人間の回復力って、本当に凄いです


そろそろ退院の時期を決めようかという頃になって、例の胃カメラと大腸カメラをしようという話になりました

入院している間の方が、自分のベッドで待機出来るしそっちの方が楽だよ、との事でした
私も勿論その方が有り難かったので、入院期間を延長して検査をしてもらう事になりました

立ったのが6月1日
歩いたのが6月2日

胃カメラの検査は6月10日になりました

検査の前はまた絶食
せっかく食べられるようになったのに、何だか残念な気持ちでした

胃カメラの検査は、口に麻酔を含んで喉に行き渡らせ、暫し待ちます
そして、人生初の胃カメラでしたが……もう苦しかった事しか覚えていません

人によっては全然楽だったよ〜という話も聞くのですが、私は全然でした
検査中ずっと嘔吐いていました
先生の「もう少しだから頑張ってくださいね〜」を意識の遠いところで聞いた記憶があるくらいです
過酷でした

検査の結果、癌はなし!
多少の胃荒れは見られるものの、この位なら一般の人でもある、という事でした

良し!
両手を挙げて喜びました

そして、6月13日
大腸カメラ

胃カメラも大概恐ろしかったのですが、大腸カメラはそれを凌駕していました
私を苦しめた下剤を、今度は2リットルも飲まなくてはいけないのです
これはかなり気が重い作業でした

業務用の洗剤みたいな入れ物に入った下剤を、自前のコップに手酌でやる訳です
味は、ちょっと変わったスポーツドリンク、という感じです
それだったら意外と飲めるのでは? と思うかもしれませんが、2リットル飲むにはきつい味でした

もう二度と体験したくありません
あの下剤がもっと飲みやすいものになるよう、医学の進歩に期待します

勿論絶食もあります
が、前日のお昼まではご飯が出ました

食べられないものと思っていた私は喜んだのですが、出された食事に我が目を疑いました
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お昼ご飯です

私は震える手でビスコを掴み、大事に食べました
最後に食べたのはココア味のウエハース
サクサクで美味しかったです

軽い麻酔を打って貰い、緊張しながら検査がスタートしたのですが
これまた激痛
ちょっと痛すぎて、久々に涙が出ました

あまりに進みが悪いのでベテランの先生らしき人に替わって「ここがこう」等と説明しながら機械を動かすんですがそれも痛い
人によっては全然痛くなかったよ〜という話も聞くのですが!
私はもう、ちょっと耐えられないくらい痛かったです!

切実に、医学の進歩に期待します

検査の結果、大きなしこりなどはなし
癌はない、との事でした

本当に嬉しかったです
ガッツポーズ

そうして、大腸カメラの次の日
6月14日
私は無事、退院する事になったのでした

勿論、これは終りではありません
むしろ始まりです

検査の為の手術でしたし、これから抗がん剤という一大イベントが私を待っています

それはまた、次回に






タグ:入院
posted by masako at 18:42| Comment(0) | 芝居以外の日常
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